日本の伝統的な履物「足袋」について
皮足袋
足袋は本来皮をなめして作られたもので、江戸時代初期までは、布製のものはありませんでした。皮足袋は耐久性に優れ、つま先を防護し、なおかつ柔軟で動きやすいために合戦や狩りなどの際に武士を中心として用いられましたが、戦乱が収まるにつれて段々と一般的に着用されるようになり、布製の足袋が登場するにつれて皮足袋は姿を消し、現在ではごく特殊な場合を除き見かけることは、なくなりました。
白足袋
白足袋は主として改まった服装の際や慶弔等の行事ごとの際に用いられ特に儀式用・正装用という訳ではありませんでしたが、黒足袋・色足袋が普段の着物にしか合わせられないのに対して、白足袋は常着から礼装まで幅広く着用することが出来る点が特色です。特に茶人や僧侶、能楽師、歌舞伎役者、芸人などはほとんどの場合白足袋を履いており、こうした人々を総称して「白足袋」と称するならいがあるそうです。能舞台、弓道場などは白足袋着用でなければあがれないことが多く、土俵上でも白足袋以外の着用は認められません。これらの例からもわかるように白足袋は清浄を示す象徴でもあり、ほかの足袋とは性格の異なったものとして扱って来られました。
黒足袋
男性の普段の着物の際にのみ用いられ、一説には白足袋のように汚れが目立たず経済的であることから考案されたとも言われ、江戸時代には一般武士の多くが黒足袋を履いたことたら、こうしたことを理由として黒足袋を嫌う人も多かったそうです。なお弔事に黒足袋を用いると言われたのは、明治時代以降のきわめて特殊な習慣であって、本来慶弔にかかわらず正装の際には白足袋を着用するのが常識になりました。からす足袋とよばれる紺木綿黒底足袋などは、表生地/裏生地に紺や黒の生地を使用し舞台の黒子が動いたときに白い部分が目立たないようなものもあります。
足袋の選び方について
初めて足袋を履くかたにとって数ある種類の中からどれを選んだらいいのか頭を悩ませるところです。考えなくてはいけないのはどういうシ-ンで足袋をはくのかということ。それによって、どの足袋を選べばいいのかおのずと決まってきます。礼装なら「キャラコの白足袋」。男性が普段の着物で履くなら光沢の綺麗な「黒朱子の足袋」、お祭りなら「化繊」、というのがお約束です。
高級足袋で使われる「キャラコ」高級足袋の標準的な表地とされている生地。縦糸と横糸の密度がほぼ同じで、折り目が均一のため美しい光沢があるのが特徴です。フォーマルな席ではキャラコの白足袋を履くのが一般的です。キャラコには、光沢を保ちながら履きやすさも兼ね備えた「のびる綿キャラコ」もあり初めて足袋を履く人にお勧めです。
コハゼの違いについて
コハゼとは、足袋のかかと側についている金物の留め具のことをいい、「4枚コハゼ」と「5枚コハゼ」の2種類があります。4枚コハゼは5枚コハゼよりも1枚少ない分、締めつけがゆったりとしています。そのため、普段着やお仕事などで、動きやすさを重視する時にお勧めです。5枚コハゼは4枚コハゼよりも1枚多い分、約1.5㎝ほど足首のところが高くなり、素肌がより隠れることで、所作が美しく見えます。フォーマルな席や踊り・お茶などのお稽古などでは「5枚コハゼ」が好まれます。
サイズ、色について
足袋はシワのないジャストのものを履くと美しく見えます。その為、草履よりも0.5㎝小さいサイズを選ぶのがひとつの目安です。初めて足袋を履く人には、ストレッチ性の素材がお勧めです。足袋を履き慣れた方や、フォーマルな席などで、より綺麗に履きたいというこだわり派の方には、甲の高さや幅の広さによって「ふっくら型」、「ほそ型」など、細かくサイズを調整した足袋もあります。
色について。フォーマルな席では白足袋、というのは決まり事ですが、プライベートで着物を着る場合は、白でも、黒でも特に決まりはありませんので、シーンに合わせて自分なりのおしゃれを楽しんでください。